
シャルル・デュトワ/指揮 モントリオール交響楽団/演奏 1982年録音
交響曲第3番、交響詩『死の舞踏』、組曲『動物の謝肉祭』 が 1枚で聴けるお得盤。
円盤(レコード・CD)の場合、カップリングも意外に大事だ。
お気に入り 1つ目は、
『交響曲第3番』 第2楽章 第1部。
この曲は、まさに サン=サーンスの魅力 を凝縮している。
ベートーヴェンのように重厚で、
それでいて モーツァルトのように軽妙でもあり、
メンデルスゾ-ンのように美しく、
リストのように技巧的、
と、言えば褒めすぎか。
つまりは、クラシックの “おいしさ” を、存分に味わうことができる。
そこには、先人の技法を徹底的に分析し、綿密に再構築する、
ある種の名人芸が感じられる。
では、そういった先達の様式をくっつければ この曲になるのか というと、
もちろん、そうではない。
再構築した上で、予定調和を少し崩してみせる。
崩しても全体が乱れないのは、
コロコロと転がるピアノがアクセントとして効いているからである。
正直に言えば、あまりに良く出来過ぎていて、ややイヤミな感じも。
前後の楽章のバランスがあるとはいえ、
もう少しだけ暴走して欲しかった。
さて、つぎにプッシュするのは
、『動物の謝肉祭』 から「水族館」。
そもそも『動物の謝肉祭』は、パーティーの余興用に作曲されたもので、ユーモラスな曲が多い。
だが、その中で、異様な妖しさを放っているのが、「水族館」 である。
弦楽器は、救急車のサイレンのように音を上下させ、不吉な予感を誘う。
そして、小刻みに ふるえる ようなピアノが、不安を撒き散らす。
水族館で感じる “異世界に迷い込んだような錯覚” が、
音の錬金術師 サン=サーンス によって、見事に表現されている。
ちなみに、
この曲で、♪キラリラリラリン♪ と神秘的な響きを聴かせているのは、
アルモニカ という楽器だそうである。

以下、延長戦 ↓
『動物の謝肉祭』 は、 パーティー・ミュージックであるだけに、
娯楽に徹した面白さがある。
ここから、あと何曲かピック・アップしたい。
まずは、「亀」。
これは、オッフェンバック 『天国と地獄』 の「カンカン」 を、
(亀だから)スーパー・スローで演奏したものである。
これを50過ぎたオッチャンが作ったのだから、バカバカしい。(もちろん褒め言葉)
クラシック冗談音楽 と言おうか、
19世紀のクレイジー・キャッツ と言おうか。

次に、「化石」。
なんと 自分が過去に作曲した 『死の舞踏』 のメロディを流用。
「今の私のクオリティに比べれば、過去の作品など化石のようなものだ」
ということか。
それに続くのは、「きらきら星」のフレーズ。
これは、“モーツアルト以来の神童” といわれた自身の幼年期の思い出、
と解釈したい。
あと 有名なのは、「白鳥」。
CDの解説に拠ると、この曲を聴いて
「これは私の魅力を描写したものだ」 と のたまう御婦人が続出したそうである。
あつかましい。
『ハルモニア』 日本テレビ(1998 ) でチェロを弾く 堂本光一
小学校の音楽の時間、この曲を鍵盤ハーモニカで吹いた。
♪ラ~シドレミファソラシ♪ と、左から右へ音が上がっていく所では、
「え~、こんなのズルイ」 とビックリしたものである。

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