「 俺の『白鳥の湖』では勝てない!」
ドリーブの 『シルヴィア』 を聴いて、チャイコフスキーが
そう言ったとか、言わなかったとか。
たしかに 『シルヴィア』 には、洗練された美しさがある。
それに比べて 『白鳥の湖』 はイモ臭い。
けれども、それがチャイコフスキー最大の魅力なのだ。
『白鳥の湖』 はスウィートポテトなのである。
オシャレではないけれど、つい手が伸びてしまう。
「音楽が大好きだ!」 という、チャイコフスキー情念が、
ダイレクトに伝わってくる心地よさ があるのだ。
第1幕 第2番 「ワルツ」
チャイコフスキーは、交響曲に [掟やぶりのワルツ挿入] をしてしまうほどの
ワルツバカ、もとい 隠れワルツ王 である。
ワルツといえば優雅なイメージだが、
この曲は、ドラムやシンバルが騒々しく鳴り響く。
しかし、それがために いっそうメロディの美しさが際立つのである。
第2幕 第13番e 「オデットと王子のパ・ダクシオン」
甘美の極み。
美しいハープの音色で始まり、まとわりつく水飴のようなヴァイオリンの旋律。
管楽器が鳴り始めると、旋律は高原のミントのように爽やかに響くが、
やがてまた濃厚な甘さが、憂いとともに襲ってくる。
ベタな展開ではあるが、だからこそ、切なくなること確実。
第3幕 第20番 「チャルダッシュ」
スロウで重たい空気の中で不穏な美しさを放つメロディ。
と突然、音楽は 強く激しく速く なる。(無論、美メロは健在)
この、緩急の落差にやられる。
第4幕 第20番『情景」、第21番「終幕」
魔法によってオディールを花嫁に選んでしまったジークフリートは、
オデットに許しを請う。
そこへ現れた 悪魔ロットバルト。
ジークフリートは怒りに燃えてロットバルトを討ち破るが、
白鳥達の呪いは解けない。
ならば せめて天国で結ばれようと、ジークフリートとオデットは湖に身を投げる。
このラストは 何度聴いても、泣ける。
オデット オディール
『白鳥の湖』 を聴くようになったのは、
小学生の頃、『ドカベン』で、殿馬が、
「秘打 白鳥の湖」などとやっていた頃である。
「そういえば母がレコードを持っていたな」
ふと思い出して かけてみて、はまってしまった。
以来、高校生の頃まで、毎日のように聴いても、飽きることがなかった。
追記:
今回、これを書きながら聴いていたのは、

バレエ音楽『白鳥の湖』全曲
アナトール・フィストゥラーリ 指揮 オランダ放送管弦楽団 演奏 ルッジェーロ・リッチ ヴァイオリン独奏
1973年 録音
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